モネ没後100年・開館25周年記念展!ポーラ美術館のコレクションの底力。

 ポーラ美術館は、私の中で最も素晴らしいと考える美術館の1つ。自宅からは少し遠い場所にあるので、すぐに足を運ぶことは難しいのですが、年に一度は訪れたくなる施設です。海外からの訪問者も大変多くいらっしゃいます。

自然豊かな地に寄り添うように存在するポーラ美術館

 2002年に神奈川県箱根町に誕生したポーラ美術館。「箱根の自然と美術の共生」をテーマにして、景観を損なわないよう、建物の多くが地下につくられている美術館です。

ポーラ美術館 入口

建築のデザインも洗練されていて、ガラス越しに見える森林の緑が魅力的です。

ポーラ美術館 建物

ポーラ化粧品の2代目会長・鈴木常司氏が蒐集した約9,500点のコレクション。今回の展示でも、その底力が存分に発揮されたものとなっています。

<モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目―モネと21世紀のアート>

 ポーラ美術館は印象派の巨匠クロード・モネの19点の油彩画をコレクションしており、これはアジア最大ともいえるコレクション数です。今回訪れた展覧会は、モネの没後100年と開館25周年を記念して企画され、これらすべてのコレクションを公開しています。モネの作品とともに近代・現代美術家の作品も紹介されており、1つの空間に一緒に展示することによって、新しい美術の価値観を提示するという試み。今回の展覧会は、「カメラ」「時間」「河」「ライフ」「庭」と大きく5つのテーマで構成され、モネの観察眼や哲学を紐解く内容となっています。

人がつくりあげた自然

モネの名作<睡蓮の池>の舞台となったのは、人口の池であることは広く知られています。

ノエミ・グダル

こちらの作品の作者ノエミ・グダルは、自ら風景を創り出し、それを絵画・写真・映像として記録しています。モネは、自然の美を捉えようと人口の池を用いました。対してノエミ・グダルは、人口で作り上げた環境そのもののゆらぎを表現しているように思います。

美しい詩のような作品

リオデジャネイロを拠点に活動するダニエル・スティーグマン・マングラネの作品。今回気になった作品の1つなので、自宅に帰った後に彼の作品や経歴を調べました。

ダニエル・スティーグマン

1本の細い枝を半分に切り裂き、ゴム紐で固定させています。一見すると非常にシンプルともいえる構造ですが、実際には繊細で美しく、何度も鑑賞したいと思わせてくれる非常に詩的な作品。今後、彼の展覧会が開催されるようなことがあれば、ぜひ訪れてみたいと思います。

ヴォルフガング・ティルマンス&フェリックス・ゴンザレス=トレス

本当に素晴らしい美術には、流行り廃りは無いと思いますが、比較的同世代にファンが多い2人。時に内向的であり、時に時代に対して「それでいいの?」という価値観を投じるような作品を多く手掛けているところが魅力。

ティルマンス作品

広告や雑誌写真も手掛け、さまざまな分野で価値の転換を促したティルマンス。私自身も彼の作品集を持っています。モネが刻々と変わる自然の様子をキャンパスに描き分けたのに対して、ティルマンスはスタジオに差し込む光によって暗に移り変わる時間を示唆しているようです。

フェリックス・ゴンザレス=トレス

若くして亡くなったアーティストですが、アーティストからもファンが多い1人ではないでしょうか。彼の代表作の1つ、キャンディーシリーズは、心に染み入るものがあります。彼の作品と、モネが最愛の妻を亡くして間もなく手掛けた作品とを並べた演出にぐっときます。

テムズ川をキーワードに

現代美術家であるロニ・ホーンの<静かな水(テムズ川、例として)>とモネの描くテムズ川。

ロニ・ホーン

ロニ・ホーンはテムズ川の写真とテキストによって、水面下に眠る記憶や歴史を鑑賞者に思い起こさせます。モネは、気候や時間によってテムズ川が異なる表情をみせる様子を描きました。両者には、1つのモチーフがもつ多面性を提示するという哲学的な姿勢を感じますね。

夢の中のような空間!

世界中で愛されるエミール・ガレのガラス作品。展覧会後半に現れたのは、モネの絵画とともにガレの作品が展示されている豪華なスペースでした。通常、展示ケース内で陳列されることの多いガレの作品ですが、今回はケースなしのある意味生身の姿。

重厚な芸術品とはまた違った展示手法で、いつもとは異なる表情をみせているように感じたのは私だけでしょうか。優れた技術とアイデアから生まれた作品は、どのような展示方法であっても、その優美さが際立ちます。

ガレ 作品群

モネとガレ。雄大な自然にインスピレーションを得ていた2人の共演です。

アローラ&カルサディーラ

床に敷き詰められているのは大量の造花です。アローラ&カルサディーラさんの作品です。これらの造花は開花から枯れるまでの過程を表現した形なのだそう。歴史や場所にまつわる史実からパラドキシカルな作品を生み出す作家さんのようです。ガレのガラス作品と、モネの絵画、作品の周囲には散っている花々。まるで夢の中のような美しいエリアでした。

 モネの素晴らしい作品群と、現代のアーティスト達の作品とが生み出した展示空間に魅了された今回の展覧会。アートの文脈的な読み方で楽しむだけでなく、それぞれの展示エリアに足を踏み入れた瞬間の視覚的な美しさやワクワク感がありました。

カプワニ・キワンガ<ピンク・ブルー>

こちらの作品名は<Pink-Blue>。モネの絵画を鑑賞した後に突如として対面したことは何とも言えない不思議な体験でした。不思議な光に全身を囲まれ、まさに非日常空間。

美術館の外にある「森の遊歩道」では、特定の時間に人工霧が出現するパフォーマンスが行われていました。入口を出て数分。森林を抜けていくと、かつて沢だった場所に霧が現れるというのは幻想的な光景でした。こちらも、モネが人口の池をつくったことと関連付けていると思われます。

ポーラ美術館 展示の様子


美術愛好家なら1度は訪れて頂きたいと感じる、今回ご紹介したポーラ美術館。今回の企画展以外にも、洗練された展覧会を多く企画されています。箱根の自然を満喫しながら、是非足を運んでみてください。

 <モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目―モネと21世紀のアート>
ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285
電話:0460-84-2111
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:2026年12月1日(火)は展示替えのため全館休館
12月2日(水)、3日(木)は、「コレクション・シネマ」展の展示替えに伴い、「展示室3」の
休室。

アクセス:(公共交通機関)
「小田原駅」で箱根登山線に乗り換え「箱根湯本駅」下車(約15分)、
「箱根湯本駅」で乗り換え箱根登山電車「強羅駅」下車(約40分)、
「強羅駅」からポーラ美術館


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