箱根の自然に映える…彫刻の森美術館
箱根彫刻の森美術館は、自然豊かな箱根という地に広大なスペースを使ってつくられた施設です。毎年多くの観光客が訪れ、リピーターも多くいらっしゃいます。今回は、こちらに足を運びました。
彫刻の森美術館とは
約7万平方メートルの敷地に彫刻作品が常時120点ほど展示されている彫刻の森美術館。箱根の山々を背景に、自然を散策しながらのびのびと作品鑑賞ができる場所です。1969年誕生以来、国内のみならず国外からも多くの美術愛好家が足を運ぶ人気の美術館です。

新しい切り口から見る、彫刻の森コレクションの個性-Unique Collection-
企画展では、現代では美術だけでなく多くの分野で深まりをみせる「多様性」をテーマに、その兆しがみえる年代のコレクション作品を紹介していました。

こちらは1972年に制作されたブロンズ作品、イタリア出身アリク・カヴァリレさんの<東洋の幻想>です。作品が生まれた少し前の1960年代のイタリアといえば、高度経済成長によって、社会が大きく変わろうとしていた時代。はるか遠い国との関係も現実味を帯びてきた時代なのではと思います。この作品からは、それまでの豊かな幻想(遠い東洋への情緒的なイメージ)が、どこか冷たい固定されたものとなってしまった時代の流れを感じます。
地下から空を仰ぐ
屋外に出てみると、井上武吉さんの作品<天をのぞく穴>が見えてきました。

黒い箱のような、こちらの入口から階段を下り…。

地下の通路を通って、ガラス張りのこちらの出口から外へ。ほの暗い通路の途中に小さな1人分のスペースが設けられています。ここにある丸い椅子に座りながら、天井にある小さな穴から空を見上げる体験型の作品です。美術館HPによると、母体から外をのぞく赤ちゃんになったようだと解説がありますが、私は地球の内側から宇宙をのぞくような不思議な感覚を覚えました。
虹と霧
目の覚めるようなブールデルの彫刻作品群の裏側には、どこか牧歌的な芝生の広場が広がります。
アメリカの彫刻家、イサム・ノグチさんのモダンな素晴らしい作品<オクテトラ>の隣にあるのは、12色の菱形の造形物が秩序をもって連なる<宇宙的色彩空間>という松原成夫さんの作品です。

鑑賞する角度によって、見えるシルエットが次々と変化し、その色合いによって空間に音楽のようなリズムが生まれます。シンプルな作品ですが、とても考え抜かれた形。視線を遮るもののない、抜けるような視覚空間にぴったりの作品です。
訪れたのは、残暑厳しい日差しが降り注ぐ日だったからか、近くにはスプリンクラーが。スプリンクラーの霧が、作品と共に自宅や職場の水撒きで思いがけなく現れる虹をも連想させてくれました。
日本近代彫刻の礎
彫刻の森美術館の屋外展示には、近代彫刻好きならば驚くような巨匠の作品が、贅沢にこれでもかという程に設置されています。

日本の近代具象彫刻に多大な影響を与えた佐藤忠良さんの作品。彼の作品は、西洋の彫刻からも、多くのものを得て制作されていることは確かだと思いますが、それを古来より存在する日本の価値観に自然と落とし込んでいることが、とても魅力に感じます。過剰な華やかさを引き算し、どっしりと、重力を意識されたような作品が多く、作家の考え方が滲み出ています。
幸せをよぶステンドグラス!
彫刻の森美術館の看板作品の1つ<幸せをよぶシンフォニー彫刻>。1975年に制作されたガブリエル・ロアールさんの作品です。

細い円柱状の高さ18mの塔の中にある螺旋階段をひたすら登る体験型の作品です。作者は、フランス出身のステンドグラス作家であり、塔の内部の壁は通常より強固なステンドグラスに覆われています。
過去に訪れた際に、何度か登ったことがあるのですが、18mといえばビル5,6階分の高さに相当します。高いところが苦手な私のような者にとっては、スタートこそ良いものの、残念ながらじっくり作品を鑑賞したり撮影したりする余裕はありません。
ただ、下から見上げる作品風景は圧巻で、幻想的でため息が出るほど。まるで万華鏡の中に迷い込んだようです。
草間彌生さんワールド
2026年8月14日に世界的に有名な現代美術家の草間彌生さんがお亡くなりになりました。水玉模様の作品が広く知られているように思いますが、彼女の作品は実に多岐に渡ります。こちらでは、草間さん作品の中でも、大変珍しい石彫の作品<われは南瓜>が所蔵されており、いまにも動き出しそうな有機的な形が石という素材で表現されており、その対比がとてもユニークでした。
そして、丸太広場キトキでは、草間さんワールドに浸ることができます。

赤と白の南瓜がお目見え。壁面やガラスにいたるまでドットに覆われ、大人も子どもも楽しめます。丸太でつくられた椅子やテーブルも、素敵なデザインで、つい写真に収めたくなります。

ピカソの突拍子もない才能に圧倒される
美術館で収蔵されているピカソ作品は319点。陶器・絵画・彫刻・版画など多彩なラインナップです。ピカソの彫刻作品は、具象彫刻家として生涯を生きた作家たちとはまた違った魅力があります。

1905年制作<アルルカン>。芸術家としての技量を感じさせながらも、彫刻家(特に具象彫刻家)が意識することの多い“量感”に対しては、それほど執着していないようにみえ、かろやかな表現を感じさせます。

ピカソ83歳の時の作品<腕を組む男>。歳を重ねてもますます精力的に、かつフレッシュに絵画と向き合い続けていたことが現れていると感じた作品。大胆で、自然で、勢い溢れる彼のセンスとエネルギーは、時代を超えて人々を圧倒します。
彫刻は三次元に存在していますので、空間を巻き込んだり、はたまた鑑賞者に五感を活用した体験を提供したり。その幅の広さが魅力ですよね。彫刻の森美術館はその彫刻作品のメリットを存分に享受できる場所です。井上武吉さんの星形の体験型の迷路<星の迷路>、他にも堀内紀子さんの<ネットの森>では、吊るされた手編みの巨大ネットの体験型アートとして人気で、どちらも子ども限定で体験できる空間ではありますが、大人もわくわくするスペースです。屋外には、ヘンリー・ムーア、ブールデル、ゴームリー、マイヨール、ロダンなど他の美術館だと目玉になるような作品がずらり。実に贅沢です。

自然豊かな場所でゆっくりと作品に触れあえる彫刻の森美術館。彫刻作品に興味のある方は、ぜひ一度訪れてみてくださいね。
「Unique Collection彫刻の森コレクションの個性」
彫刻の森美術館 THE HAKONE OPEN-AIR MUSEUM
住所:〒250-0493 神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121
電話:0460-82-1161
開館時間:9:00〜17:00 年中無休・入館は閉館の30分前まで
会期:2026年1月31日(土)~未定
会場:本館ギャラリー
アクセス:電車/小田原駅→箱根湯本駅→箱根登山鉄道「彫刻の森」駅下車、徒歩2分
※足をお運びの際には、事前にご確認ください。







