多彩なアートが楽しめる!銀座ギャラリー巡り
銀座といえば、多くの美術ギャラリーが存在し、アカデミックな作品から現代アートまでさまざまな芸術を楽しむことが出来ます。扱う作品はギャラリーごとに特色があり、鑑賞者は自分の気分に合わせて作品鑑賞ができるのです。今回は銀座に足を運び、3つのギャラリーを訪れました。
銀座にある有名ギャラリーの1つ、メゾンエルメス
銀座メゾンエルメスは、地下1階~4階はエルメス銀座店のフロアとなっていて、8階は、アート・ギャラリー“フォーラム”があります。無料でありながら、大掛かりな展示も多数開催しており、美術好きなら御存知の方も多いのではないでしょうか。こちらでは「体を成す からだをなす FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展」が催されていました。
ポール・ヘマケさんの<I Lost Track of the Swarm>天井に展示され、ゴム製のゴキブリや種子、合成毛などが作品に使われているそうです。うっすらとみえるシルエットがそれらのものだと思われます。日常に溢れるものたちがこのように展示されると、何気ない日々が尊い幻想的なひとときに感じられてくるから不思議です。
クリスティーヌ・デュクニットさんの作品群。シアン化物・アセトン・油など自由な素材で時間によって変化する素材を用いるなどして作品制作をされていた方のようです。化学変化によって変容していくということで、どこはかとなく儚いイメージが湧いてきます。
先述したポール・ヘマケさんの<The Lavender Ray>。2025年の作品です。美しいラベンダー色の布の揺らぎをみていると、夢の現実の狭間を体感しているようです。
テキスタイル×彫刻×映像
ネフェリ・パパディムーリさんの<We Are Forests>という作品で、天井から洋服?ドレスのようなコスチュームが吊るされています。しかし、よくみるとサイズが大きく、着用するのは困難なデザインです。解説を拝見すると、様々なテキスタイルを集団で作動させ、彫刻的な装置に変容させる表現を行っているそう。後に、その映像も鑑賞することが出来ますが、私としてはこちらの展示だけでも十分楽しめました。“彫刻”の意味合いも時代の変化によって解釈が変化しているのですね。
250本の傘をつかった巨大な作品!
日本の美術家・笹原晃平さんの<Sunny>という作品。彼は、現実の要素を浮き彫りにして、日常生活の詩情を明らかにするという試みを行っています。今回は廃棄された傘を用いて、まるでシェルターのような作品を作っています。エルメスの高級感溢れる場所にあるからか、公共の場で見掛ける傘たちとは異なる表情。
ギンザ・グラフィック・ギャラリー
普段、デザインに関する展示は熱心に足を運ぶ訳ではないのですが、今回銀座を歩いていると、公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)主催の受賞記念として展覧会が開催されているとのポスターが目に入り「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」さんにお邪魔することにしました。今まさに活躍中のデザイナーさんの作品が鑑賞できるということで期待が高まります。
入口すぐのギャラリー1階では、亀倉雄策賞を受賞した林規章さんの個展が開催されていました。
机上に陳列されているのは、作品のためのドローイング、アイデアスケッチのようなものでしょうか。アイデアをより完成されたものに導くための設計図のようです。
デザインは日常生活に溢れている
地下はJAGDA新人賞2025を受賞した城﨑哲郎さん・サリーン・チェンさん・松田洋和さんの作品が多数展示されています。
こちらの3つの作品は、実際にお醬油を販売しているお店の包装紙や山荘で使われている包装紙だそう。シンプルながらも粋なデザインです。1つだけでなく、3つ並べた様子もお互いを引き立てるように感じられるのは不思議です。
キャッチボールクラブのポスターのようです。言葉が素朴な雰囲気でデザインされ、「キャッチボール」というイメージにもマッチします。
上は「UNIQUE PRODUCTS」という展示販売会のポスター、下は「JEWEL BOX♯004硝子と宝石」という展覧会のポスターです。洗練された素敵な雰囲気です。
会場全体の写真です。考えてみると、身の回りのものは必ず誰かがデザインしてくれているからこそ、生まれているのですよね。斬新で遊び心溢れるデザインは、生活に彩を与えてくれます。別のフロアには、デザイン関連の本が充実したスペースもあるようです。
創始者ガブリエル・シャネルの精神を受け継ぐ「シャネル・ネクサス・ホール」
シャネル・ネクサス・ホールは、多くの芸術家たちを支援してきた創始者・ガブリエル シャネルの精神を受け継ぎ、定期的に展覧会やコンサートを企画しています。今回は「Dressing Up: Pushpamala N」というタイトルで、インド出身のアーティスト・プシュパマラNさんを紹介していました。
展示空間全体がファッショナブルな印象を与えます。壁面が薄いピンク色に統一され、彼女の制作テーマの1つである“ジェンダー”も暗に示唆されているようです。作品を展示するための演出には非常にこだわりを感じます。
プシュパマラさんは、1990年半場頃から、様々な役柄に扮して物語を作り、フォト・パフォーマンスなどで作品制作を行っている作家のようです。今回はインド映画に登場する女性キャラクターにアイデアを得て、インドにおけるジェンダー観に一石を投じるような内容となっていました。
プシュパマラさんのインタビュー
私の記憶にあるインド映画といえば、どこか演劇的というか、あえてリアルさを排除したような世界観が強く印象に残っています。会場内にあるインド映画についての解説を拝見すると、やはり古くからその傾向はあるようです。
こちらの写真の作品は同じポーズを2時間繰り返し撮影されたものだそう。ナイフに照明が良い角度で当たるように調整した結果、長時間の撮影に及ぶことになったようです。鑑賞者側からすると一瞬のひとときですが、その一瞬にこだわりが詰め込まれているのですね。
会場内には、プシュパマラさんのインタビューが上映されていました。15分程度という比較的短い時間ということもあり、全てみることができました。作者のインタビューはとても興味深く、展覧会を訪れる際にはいつも時間が許す限り拝見しています。彼女によると、油絵は西洋の歴史と共に歩んできたため、どうしてもインド(インド以外の国にもいえることだが)で制作される油絵作品にも西洋の影響がある。しかし写真作品はそのようなことが起こりにくい。というようなことを話していました。特に植民地時代を反映していないところが良いという話には、非常に感銘を覚えました。
ちなみに、先程のナイフ写真のエピソードもインタビューでお話しされていた内容です。
こちらは1996-1998年に制作された<Phantom Lady or Kismet>という作品シリーズの一部です。24枚のモノクロ写真で構成され、映画的描写をパロディ化した冒険譚です。プシュパマラさんが怪傑ゾロに似せたファントムレディなど2人の女性主人公を演じています。ムンバイで撮影された懐古的でドラマチックな作品です。
会場後半には2012年に制作された<RETURN OF THE OHANTOM LADY>が展示されていました。こちらは<Phantom Lady or Kismet>の続編として制作されたものです。長い時を経て、現代のインド文化を反映したようなカラー写真です。お馴染みのキャラクターでありながら、情緒的なムンバイの街が作品内から消えているところに感慨深さを感じます。
ギャラリーは美術館の展示よりも、より実験的な内容で企画を組むことが出来るような気がします。ですので、冒険的な催しも多く、同時に費用も無料であることも多いので、鑑賞者側も気軽に訪れることができます。そこが大きな魅力ですね。
銀座は、たくさんの美術ギャラリーが存在しています。お近くに足をお運びの際には各ギャラリーの催しを確認して、興味の赴くままに訪ねてみるのもいいですね。
<体を成す からだをなす – FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展>
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座5-4-1 8・9階銀座メゾンエルメス ル・フォーラム
会期:2025年7月19日(土)〜2025年10月12日(日)
電話:03-3569-3300
最寄り駅:JR有楽町駅、地下鉄銀座駅
時間:11:00〜20:00 (最終入館時間 19:30)※日曜日は、11:00~19:00(入場は18:30まで)
休日:不定休 ※店休日に準ずる
<ギンザ・グラフィック・ギャラリー特別展2025 JAGDA 亀倉雄策賞・新人賞展>
住所:〒104-0061東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1階/B1階ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
会期:2025年07月15日(火)~2025年08月27日(水)
電話:03-3571-5206
最寄り駅:地下鉄/銀座線、日比谷線、丸ノ内線「銀座」、JR/「有楽町」「新橋」駅
時間:11:00~7:00
休日:日曜・祝日
<Dressing Up: Pushpamala N>
住所:〒104-0061東京都中央区銀座3-5-3シャネル銀座ビルディング4階CHANEL NEXUS HALL
会期:2025年6月27日(金) ~8月17日(日)
電話:03-3779-4001
最寄り駅:東京メトロ 銀座駅、銀座一丁目駅
時間:11:00 – 19:00(最終入場18:30)
休日:会期中無休
※会期は既に終了、または変更の可能性があります。足をお運びの際は事前にお確かめ下さい。