多くの芸術家にインスピレーションを与えたHenri Matisse 「マティス 自由なフォルム」展

 昨年から「マティスの大規模な企画展が開催される!」とさまざまなメディアを通して聞いていたので、必ず足を運ぼうと考えていた「マティス 自由なフォルム」展。今回はこの展覧会についてお伝えしていきます。

巨匠ヘンリ・マティスの作品が来日!
 今回、展覧会が行われている場所は、六本木にある国内最大級の展示スペースをもつ美術館。2007年に開館し、近代以降の芸術を幅広く紹介しています。こちらで2024年2月14日から始まる展示「マティス 自由なフォルム」では、20世紀最大の巨匠アンリ・マティスの貴重な作品が多数公開されています。

国立新美術館

マティスは、画家として絵画制作に取り組む一方で色を塗った紙をハサミで切り、それを紙に貼り付ける「切り紙絵」に挑んでいたこともよく知られています。今回の展示では絵画や彫刻の他に、マティスが制作した切り紙絵も含め作品・資料おおよそ約150点が展示されています。また、約4m×8mにも及ぶ大作<花と果実>はフランスで修復された後、日本で初めて公開されるのだそう。彼が晩年に芸術家人生の集大成として取り組んだヴァンスのロザリオ礼拝堂も貴重な資料と共に紹介されています。

マティス 花と果実

調度品を重要なモチーフとして扱ったマティス
 マティスの作品画面には、東洋風の柄を思わせる柄やゆるやかなカーブを描く肘掛椅子などが度々登場します。これはアトリエ内にある家具などをモチーフとしたものも多く、それらは引っ越しの際にも大切に次の場所へと運ばれたそう。今回の展示では、実際にマティスのアトリエに置かれていた調度品も展示されていました。個性的な家具たちを眺めていると、「装飾」の要素を重んじていたマティスのこだわりが感じられました。

遊び心満載の舞台衣装
 壁画やテキスタイルも手掛けていたマティス。1920年、パリのオペラ座で公開された「ナイチンゲールの歌」の舞台装置や衣装をデザインしています。人の体を立体物と捉えて考えられた衣装もあれば、あえて平面的な装飾を施した衣装も。展示会場では衣装を着用した舞台の映像が流れていましたが、やはり本物の舞台を鑑賞してみたいですね。

傑作<ブルー・ヌード>
 マティスといえば<ブルー・ヌード>を思い出す方も多いのではないでしょうか。

マティス ブルー・ヌード

切り絵はマティスにとって新たなインスピレーションのもととなったようです。一見子どもの遊びのような自由な創作のように思えますが、切り紙同士が重なり合う部分が女性の体に奥行きを与えている仕掛けなど、随所に表現者としてのこだわりがみてとれます。

黒と白で表現された<木(プラタナス)>
 ミュージアムショップでもたくさんのグッズが出ていた作品。

マティス 木(プラタナス)

1951年制作の作品ですが、キャプションに「白色のグアッシュで修正/中央下部に紙が貼り付け足されたベラム紙」との記載があります。墨一色で描かれた作品ですが、白で修正している箇所があります。(その上、修正したことがぱっと見てわかりやすい!)この感覚は、日本絵画にはあまりみられない表現かもしれないと思いました。歴史的に残る作品たちを思い浮かべても、墨一色で作品を仕上げるならば、修正はせず後戻りしない、それが潔し。というような考えが強いのではないでしょうか。

最晩年の傑作「ロザリオ礼拝堂」
 1948年~51年にかけてマティスは南フランスのロザリオ修道院に暮らす修道女たちのための礼拝堂を制作しています。建築のみならず、室内の調度品やテキスタイルなどさまざまなデザインを手がけました。丸ごとデザインしたといっても過言ではありません。

礼拝堂マケット

礼拝堂のマケット。屋根に施されたブルーの模様がマティスらしい!

生命の木

ステンドグラスのための習作。最終案として採用された<生命の木>。

蜜蜂

試作された<蜜蜂>の習作。こちらは最終的に使われることはなかった案だそう。

司祭服1

建築物のみならず、司祭の服一式をデザインしました。色違いで6種類の司祭服を制作。それぞれの色によって象徴的な意味合いが変わるそうです。

司祭服2

海藻類のフォルムにヒントを得たデザインが多用されています。緑・黄色が用いられた明るくユニークなデザインのものも。それぞれの色で異なる模様が使われていますが、マティスの遊び心はいずれも健在。

マティスが手掛けた礼拝堂を館内に再現!
 会場の最後には礼拝堂内部の空間を再現しているスペースがあります。シンプルなつくりのように思えますが、採光に非常に気を配り、神々しい空間。その様子が伝わるように展示空間の照明も刻々と変化する演出になっています。

礼拝堂内部

夜明けから日暮れの光の移り変わりを体験できます。ちなみにマティスは礼拝堂の空間にとって一番好ましいのは冬。時間は朝の11時の光だそう。

ステンドグラス

ステンドグラスをとおして光が写り込む様子も再現されています。建物は黄色・緑・青を基調にデザインされているようでした。マティスがデザインした司祭服がこの空間に登場すると、がらっと雰囲気が変わりそうです。いつかロザリオ礼拝堂に訪れてみたいものです。

展覧会をみて
 国内の美術愛好家が大注目しているであろうヘンリ・マティスの展覧会。今回は展覧会初日に足を運びました。平日であったためか人混みがつらいという思いはしませんでしたが、来館者は多かったように思います。土日となるとかなりの混雑が予想されますね。ブルー・ヌードや礼拝堂などと並び、展覧会開始前から話題となっていた巨大な作品<花と果実>も椅子に座ってじっくりと眺めることができました。花びらや果実、おしべやめしべと思われる造形はリズミカルな画面構成で、こちらの気分まで明るくさせてくれます。マティスの作品には墨一色で描かれた作品もあり、とても味わいがあるのですが、やはりマティスならではの色使いは本当に楽しい気分になります。彼の芸術人生をかけた礼拝堂の企画・デザインを鑑賞していると、自身の創作を客観視しつつ楽しんで取り組んでいた様子が思い浮かびます。

お洒落すぎる…。マティス展グッズたち
 さすがヘンリ・マティスのグッズ。デザイン性に優れたものがたくさんありました。特にマティスのアトリエの調度品がモチーフとして描かれた作品、礼拝堂の海藻を思わせるデザインたちは流行に左右されない素晴らしさがあります。時代がもっと進んでいったとしてもマティスの人気は衰えないだろうなと感じました。

いかがでしたか。偉大なる芸術家・マティスの作品を多数鑑賞できる貴重な機会。ぜひ足を運んでみてくださいね。

<Henri Matisse-Formes libres マティス 自由なフォルム>
会場:国立新美術館 企画展示室2E
〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
会期:2024年2月14日(水) ~ 2024年5月27日(月)
休館日:毎週火曜日休館 ※ただし4月30日(火)は開館
開館時間:10:00~18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで。
アクセス:電車
     東京メトロ千代田線乃木坂駅青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
●足をお運びの際には事前にご確認ください●


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