何度も訪れたい!情緒あふれる日本民藝館「柳宗悦唯一の内弟子・鈴木繁男展―手と眼の創作」展

 日本各地にある伝統工芸品の価値を認め、その素晴らしさを広める“民藝運動”で知られる柳宗悦。彼がその才能に感動し、唯一内弟子として認めたのが鈴木繁男という人物。“民藝”に関する展覧会には何度か足を運んだものの、彼にスポットライトが当たった展覧会はあまりなかったように思います。今回、鈴木繫男の作品が日本民藝館にて多数公開されるということで訪れました。

目黒区にある日本民藝館とは…

“民藝”とは、民衆的工藝の略。民衆が日常的に使う工芸品に美を見出す”という概念をもとにしてつくられた言葉です。この考え方を広める目的で柳宗悦らによって1936年に開館した施設が日本民藝館です。民藝品の蒐集・展覧会企画などを行っており、陶磁器・染織品・木漆工品・絵画・金工品・石工品など、幅広い分野で日本や諸外国の新古工芸品約17000点が収蔵されています。私も過去に何度か訪れており、ついつい時間を忘れて滞在してしまう素敵な場所です。

日本民芸館 入口写真

柳宗悦の内弟子「鈴木茂雄」

日本民藝館設立に尽力し、初代館長として就任した柳宗悦。柳の唯一の内弟子として1935年に入門した鈴木茂雄は、陶磁器・装幀・漆絵などの作品を制作しています。没後20年という節目で、今回彼の仕事や思想を網羅的に紹介しているようです。鈴木は、日本民藝館陳列ケースや展示台の拭漆塗りなども手掛け、雑誌「工藝」の装幀を手掛けていたのだとか。日本民藝館HPに掲載されていた鈴木の作品は決して奇をてらっておらず、地に足の着いた確固とした哲学のもと、ものづくりに向き合っていた姿勢が感じられます。

格式と味わいのある建物

民藝館が開館した当初に竣工した部分は旧館と呼ばれています。柳宗悦が中心となり設計されたようで、和の中に洋を取り入れたデザイン。

旧館と石塀は2021年に東京都指定有形文化財に指定されており、重厚で趣深い雰囲気です。

日本民藝館 石塀

このような歴史ある建物は現代の若い方々の目にはどう映るのでしょうか。受付も入口横にひっそりと。

日本民藝館 受付

どこか微笑ましい、民藝の「植物文様」

1階にある展示室には桃山時代~江戸時代の植物文様が施された陶磁器が展示されていました。牡丹・梅・柳など装飾品によく用いられる植物以外にも、わらびなどといった少しユニークなモチーフを取り扱った作品もありました。五客一組としてつくられた小皿は、それぞれに笹の葉が描かれているのですが、手描きなのでかなり面持ちが異なります。これも手仕事ならではの楽しみでしょう。(一瞥して笹と分からないほどラフに描かれたものもありました。)ぐるりと展示室を一回りした後に、もう一度室内を回って作品を鑑賞してみると一周目とは作品の見え方が異なるほど、どの作品も個性豊かで味わいがあります。

民藝運動に大きな影響を与えた朝鮮白磁

2階第1展示室では、朝鮮半島でつくられた石工品と白磁が展示されていました。李朝時代の白磁は私が大好きな工芸品の1つなので、大変嬉しく思いました。18世紀朝鮮時代の白磁は、品格があり洗練された佇まいの中にあたたかさも感じられることが魅力。その色・質感・造形は<朝鮮白磁>唯一無二のものといえるでしょう。柳が朝鮮工芸に関心をもつきっかけとなり、民藝運動の原点ともなった「染付秋草文面取壺」が展示されていたことにも感動しました。

鈴木茂雄

鈴木茂雄さんの仕事は、1つ1つの作品の素晴らしさはもちろんのこと、陶磁器・装丁・挿絵など網羅的に彼の作品を鑑賞することで見えてくるものがありました。

鈴木茂雄 作品1

どれも全く異なる雰囲気のデザインのものを生み出しながら、どれも名品なのです。これらの優れた作品が世に出るまでに、どれほどの失敗作があったのか。もしかすると彼ほど抜群に良い感覚をもつ作り手ならば失敗作というものはそれほどないのではないか?と考えてしまうほどでした。

鈴木茂雄 作品2

1つの成功した仕事に甘んじることなく、さまざまな創作活動を通じてその手法ならではの美を探求していることが伝わってきます。

個人的に気になったのは、櫛描きという櫛型の道具を使って装飾する技法を用いた陶磁器。時代の流行に左右されない普遍的な美しさを感じました。

鈴木茂雄 作品櫛掻皿

ミュージアムショップ

古今東西から集まった民藝品を扱っており、書籍や陶磁器、文房具などが多く並んでいました。価格も手の届く範囲のものが揃っており、気に入ったものがあれば購入する方も多いのではないでしょうか。贈り物を選ぶ時にもぴったりなので、誰に贈ろうか?家のどこに置こうか?など想像するのも民藝を楽しむひとときですね。

展覧会をみて

柳宗悦唯一の内弟子という名の展覧会は、多くの人の興味を惹くのではと思います。期待通り、鈴木茂雄の作品はどれも独自性に富んでいながらも奇抜ではなく、普遍性を兼ね備えています。彼の創作活動はもちろんのこと、彼を見出した柳の審美眼に驚きます。今回の展示ではデザイン関連のお仕事をされている方かな?と思うような方が多く来館されていました。海外から観光に来たという方もお見掛けしましたが、日本の工芸や芸術に興味のある方にとって大きな感動があるでしょう。また、来館するたびに思うのは展示ケースのすばらしさ。民藝は民衆の日用品の中に美を見出すという考えのもと発展したので、ホワイトキューブの美術館によくある汚れ1つない展示ケースではいまひとつ、民藝館にある味わい深い展示ケースの中で陳列されていることが最も美しいように思います。そして民藝館の窓から差し込む自然光は、作品たちを生き生きと映し出す役割を担っているようにも感じました。素朴な輝きは、日常の光の中で生きるものでしょうか。

日本民藝館 展示の様子

 日本民藝館は企画展だけでなく、建物や調度品を鑑賞するのもアンティーク好きや古美術ファンにはたまりません。ぜひ足を運んでみてくださいね。

<柳宗悦唯一の内弟子 鈴木繁男展―手と眼の創作>
日本民藝館
住所:〒153-0041 東京都目黒区駒場4丁目3番33号
TEL: 03-3467-4527
会期:2024年1月14日(日)~3月20日(水・祝)
休館日:毎週月曜日
開館時間:10:00–17:00(最終入館は16:30まで)
アクセス:電車をご利用の場合
京王井の頭線「駒場東大前駅」西口から徒歩7分
小田急線「東北沢駅」東口から徒歩15分
※足をお運びの際は事前にご確認ください。


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