名作椅子に会える&触れる“椅子の美術館”埼玉県立近代美術館

 仕事や家事など慌ただしい日々の中で、身の回りの家具やインテリアについて「もう少し、気に入るものが欲しい。」とふいに思うことがあります。最近は、高級なブランド品でなくても良い。使う人のことを考え抜いてくれたような、そして長く使い続けられるようなものに惹かれます。最近気になっているのは「椅子」。名だたるデザイナーが創作した椅子たちを実際に座ることのできる、そんな美術館があります。

埼玉県立近代美術館とは

 今回訪れたのは、埼玉県立近代美術館です。北浦和駅西口から徒歩数分という立地にあり、遠方から足を運ぶ方も多いのではと思います。気持ちの良い広々とした北浦和公園内にあり、休日には家族連れで賑わいます。しかし、美術館の中が大勢の来館者で賑わう…ということは比較的少ないように思いますので、週末にゆっくり芸術鑑賞に浸りたいという方におすすめです。

埼玉県立近代美術館 入口

1982年にスタートした美術館ですが、モダンな建築は当時、さぞ話題になったのではないでしょうか。今回のお目当て「名作椅子」も記事後半で紹介していきたいと思います。

4,200点にも及ぶ近代美術のコレクションにスポットライトを当てる

 今回の「コレクションの舞台裏―光をあてる、掘りおこす。収蔵品をめぐる7つの試み」展は、美術館所属の学芸部スタッフがそれぞれの視点でコレクションについての調査研究をもとに、その魅力を発信する。という内容の企画展。アーティスト・トークやミュージアム・レクチャーなどにも力を入れ、普段はなかなか知ることのできない美術活動の裏側を知ることのできる、大変興味深い試みです。

学芸員の机

会場序盤に<「コレクションの舞台裏」の準備をする学芸員の机>として展示されていました。

学芸員の机

開館初期のコレクション、キスリング

 まず、目に留まったのは20世紀前半に活躍したキスリングの作品です。開館当初にコレクションに加わった作品です。

キスリング 作品

どこかメランコリック、そしてつややかで鮮やかな色彩が特徴で、エコール・ド・パリの代表人物として知られています。優雅な女性を描くイメージが強い画家ですが、静物画は、画面から沸き立つような独特の空気を感じます。

近年発見された田中保の資料

十代で渡米し、シアトルとパリで活躍した画家・田中保のアトリエをイメージしたスペースが展示会場の一角に再現されていました。

田中保 アトリエ

近年、パリから田中がかつて暮らした旧アトリエで、手紙や写真などの田中の生涯を紐解く上での貴重な資料がまとまって発見されたようです。2025年には、現地調査が行われました。生前日本での活躍を願っていたという田中の祈りが通じたかのようですね。

作品の裏に記された画家の思い

公私ともに田中を支えた妻のルイーズ・カンとは、深い愛情で結びついていると同時に激しいぶつかり合いもあったようで、作品<キュビストA>の裏面には「ルイーズ・カン、愛しい怒れる人よ、あなたは永遠に僕を苛むだろう」という詩が記されています。制作と人生、愛と芸術。ドラマチックな人生からは強固な芸術作品が誕生するのでしょう。

田中保 キュビストA

こちらの作品の背面に先ほどの詩が記されています。

草間彌生の小作品

 日本を代表する現代美術家・草間彌生の作品も展示されていました。展示会場を大きく変容させてしまうインスタレーション、巨大な彫刻作品も広く知られている作家さんではありますが、今回展示されている小さな作品群からは作家個人の内省的な様子が見てとれます。

草間彌生 作品

もちろん制作された時期により作風は変化があるものと思いますが、着手する作品のサイズによって、おのずと表現も変わるということも作品鑑賞する上で面白さを感じます。

花柄の毛布が象徴するもの。江頭誠「夢見る薔薇~Dreaming Rose」

現在活躍中の作家を紹介する「アーティスト・プロジェクト♯2.0」では1986年生まれの江頭誠さんの作品が展示されていました。

江頭誠さん作品

私の世代からすると、一種のノスタルジーを感じる「花柄の毛布」を用いて、立体作品を制作されている方のようですね。身の回りの既製品を毛布で包み込み、フォルムをぼやかすことで一気に非日常的な佇まいが生まれます。花柄は、昭和の時代を彷彿させるだけでなく暴力的なまでの華やかさ、夢と現実の境界線を曖昧にさせるようなイメージで興味深く拝見いたしました。

椅子の美術館!

さすがは、椅子の美術館。館内のいたるところに名作の椅子が設置されています。公園にあるベンチのように、普通に座ることができるのは驚きです。

アルネ ヤコブセン アントチェア

アルネ・ヤコブセンの<アント/モデル3101>です。現在、手に入れたいと思ったらなかなかのお値段なはずです。こちらの隣には、ずらっと歴史的名作椅子が並びます。

江頭誠さん椅子

「アーティスト・プロジェクト♯2.0」にて展覧会を開催していた江頭さんの<梱包されたパイプ椅子>もありました。

そして、展覧会会場に足を踏み入れると、それぞれの部屋に名作椅子が設置されており、その椅子で休憩することが可能です。

展覧会会場椅子

作品を鑑賞して、せっかくなので名作椅子も堪能して…。となると少し忙しいですが、展示室を移動するたびに出品作品以外の楽しみがあるということは贅沢ですね。

どの名作椅子も、それまでの時代がもつ「椅子」の概念を打ち破ってきた功績があるのだ…!と思うと座らずにはいられません。

 今回、名作椅子を目的として美術館に足を運びましたが、美術館のコレクションを7つのセッションに分け紹介していくという、中身の濃い企画展や現在活躍する作家を紹介するプロジェクトなど、見所満載でどちらがメインなのか分からなくなってしまいましたが、贅沢な悩みともいえます。HP上では「今日座れる椅子」が紹介されており、それぞれの展示室やフロアで体験できる名作椅子が紹介されています。もし、お目当てのものがあれば、事前に調べてみることをおすすめします。

企画展とともに名作椅子も楽しめる美術館。ぜひ、興味のある方は足を運んでみてくださいね。

 

<コレクションの舞台裏―光をあてる、掘りおこす。収蔵品をめぐる7つの試み>
埼玉県立近代美術館
期間:2026年2月7日(土) ~ 5月10日(日)
住所:〒330-0061埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
電話:048-824-0111
開館時間:10:00~17:30 (展示室への入場は17:00まで)
休館日:月曜日(ただし、2月23日、5月4日は開館)
アクセス:公共機関 JR京浜東北線北浦和駅西口より徒歩3分(北浦和公園内)

※足をお運びの際は、事前にご確認ください。


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