彫刻作品を堪能する。朝倉彫塑館「朝倉文夫」とSCAI THE BATHHOUSE「鈴木友昌」

 上野には多くの美術館があり、美術好きであれば何度か足を運んだことがある。という方も珍しくないのではないでしょうか。個人的には、上野だけでなく台東区全体の街に流れる雰囲気が好きで、小さなギャラリー・商店・文化施設も素敵なスポットがたくさんあるように思います。今回は台東区日暮里駅から徒歩圏内にある2か所のアート・スポットを目指します。

国指定名勝・国登録有形文化財の朝倉彫塑館とは?

朝倉彫塑館は、かつて彫刻家・朝倉文夫のアトリエと住居だった施設で、現在は主に彼の作品や資料を紹介しています。1907年に建てられ、増改築を経て1935年に完成した歴史ある建物は1964年に朝倉文夫がこの世を去った後、1967年に遺族によって台東区立朝倉彫塑館となりました。2001年には建物が国の有形文化財に登録され、2008年には敷地全体が国の名勝に指定。2025年の秋に足を運んだ際には「生誕100年ASAKURA Kyoko」が開催されていました。朝倉文夫の娘である朝倉響子の70年有余にわたる創作活動から生み出された作品群が公開されているということで、多くの人々が鑑賞に訪れていました。

朝倉彫塑館入口(1)

彫刻家・朝倉文夫の作品が出迎えてくれる入口

歴史ある建物入口には朝倉文夫の2つの作品が堂々たる雰囲気で鎮座しています。1つは、1908年に制作された<雲>です。大勢の人々が雲を思わせる台座の上で食い入るように何かをみつめています。

朝倉彫塑館 玄関周辺作品 (1)

確かなデッサン力でつくられた作品は力強さがあり、また、ブロンズの質感によって、重々しい空気をまとっています。この作品と対を成すように男性の裸体像が展示されています。こちらは別の男性像と随時入れ替えされているようですね。

かつてアトリエだった展示室

アトリエとして使われていた天井高8.5メートルの部屋。

撮影禁止のスペースでしたが、光の取り入れ方から制作に対するこだわりが垣間見えます。朝倉響子の初期~晩年にかけての作品が展示されていました。父が日本彫刻界の巨匠・朝倉文夫でありながら、自らも彫刻の道を選ぶことは、かなりの覚悟が必要だったのではないでしょうか。

日本最大級の美術団体・日展を離れて、無所属の道を選び、自分にしかできないことを求めた響子さん。彼女にとって真摯に制作と向き合うことと、自由であることはイコールであったのかもしれませんね。以前から彼女の作品は、ファッショナブルな印象もあったからか“彫刻とは…?人間とは…?”というアカデミックな雰囲気よりも、どこか軽やかさを感じていました。今回の展示の解説を引用すると「見る人は見る、見ない人は見ないというように、あまり意識していないようなところに置きたい」とご本人が語っていたようです。

美しい中庭

朝倉彫塑館の顔の1つともいえる中庭。

朝倉彫塑館 中庭 (1)

さまざまな部屋からこの「五典の池」を望むことができます。朝倉文夫が自己反省の場として設計したというこちらの中庭は、美しいだけでなく、彼の深い精神性とも通じている気がします。ゆっくり座禅でも組みたくなるようなひとときでした。

朝陽の間

東に大きく窓をとった朝陽の間。

こちらの窓から眺めることのできる建物の屋根には、作品<浴光>という女性像が設置されています。

朝倉彫塑館 浴光 (1)

お部屋自体も非常に美しいつくり。各部屋のあちらこちらに朝倉文夫の作品が展示されています。

朝倉彫塑館 朝陽の間

屋上庭園

もともとは菜園だったという建物屋上です。遠くにはビルなどの近代的な建物も多く目に入りますが、朝倉文夫が存命だった頃にはどんな景色が広がっていたのでしょうか。

朝倉彫塑館 屋上庭園

陽光が降り注ぐ蘭の間

非常に美しく、住まいの中にこのような空間があるなんて。と羨ましく感じてしまった「蘭の間」。東洋蘭を熱心に育てていたようです。植物を育てること、庭を眺めること、一見制作とは繋がっていないようでも、人生をかけて彫刻制作をするために蘭の間で過ごすひとときは、必要不可欠な時間だったのでしょう。

朝倉彫塑館 蘭の間

SCAI THE BATHHOUSE

ところ変わって、朝倉彫塑館から徒歩10分~15分にある美術ギャラリー、SCAI THE BATHHOUSE。こちらのギャラリーは現代アートに特化したスペースとして、200年の歴史をもつ銭湯を改装してつくられました。

SCAI THE BATHHOUSE ギャラリー外観

確かに銭湯の面影が色濃く残っています。入口には下駄箱があり、ますます銭湯の趣きを感じながら展示室に入りますが、展示室内は高い天井や自然光の美しさ、モルタルの床に白い壁面、銭湯らしさはあまり感じられません。

具象表現の木彫

今回展示されていた作品は彫刻家・鈴木友昌さんの作品。1972年生まれの方で、ロンドンにお住まいだった経歴もお持ちのようですね。木彫の作品ですが、モデルとなっている人物はいわゆる「現代の若者」。どの人物もファッショナブルな装いに身を包んでいます。木の素朴な質感に、カラフルな色合いが何とも不思議な印象。

鈴木友昌  作品

実物の半分以下と思われる60cm程のサイズ感です。

どの作品のモデルも(解説をみると実在の人物と思われます。)自分の好きなものを身にまとって幸福であるはずなのに、広い空間に点在しているような様子からは孤独感も漂います。

SCAI THE BATHHOUSE ギャラリー全体

 

 日本近代彫刻の巨匠・朝倉文夫、響子の作品と現代アート界を木彫という古典的な技法で生き抜く鈴木友昌さんの作品を同時に鑑賞できた貴重な機会でした。時代は常に進んでおり、それを踏まえて上でつくられた作品には力強さがあるということを改めて感じました。現在誕生している「これまでになかった美術作品」も100年後には古典的な作品として位置付けられているだろうと思います。もしかすると、アート・美術といった定義も大きく変わっているかもしれませんね。ただ、それぞれの時代を反映したような作品はやはり、時代が進んでも素晴らしさは変わらないのではとも思います。

台東区は上野だけではなく、さまざまな文化施設があります。ぜひ、探索してみてはいかがでしょうか。

 

 

「生誕100年ASAKURA Kyoko」朝倉彫塑館 ※会期は終了しています。
住所:〒110-0001 台東区谷中7丁目18番10号
電話:03-3821-4549
休館日:月曜・木曜(祝休日と重なる場合は翌平日)
会期:2025年9月13日㈯~12月14日㈰
開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
アクセス:JR、京成線、日暮里・舎人ライナー日暮里駅北改札口を出て西口から徒歩5分

 

「鈴木友昌 個展」SCAI THE BATHHOUSE ※会期は終了しています。
住所:〒110-0001東京都台東区谷中6-1-23柏湯跡
電話:03-3821-1144
休廊日:日、月、祝日
会期:2025年8月23日㈯~10月18日㈯
開館時間:12:00~18:00
アクセス:JR日暮里駅南口、東京メトロ千代田線根津駅1番出口より徒歩可
※足をお運びの際には事前にご確認ください。


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