開館30周年・千葉開府900年記念!千葉市美術館のコレクションを味わう

 千葉市美術館では、開館30周年・千葉開府900年記念を迎えた2025年、およそ1年間、複数のテーマのもと、コレクションを紹介する試みを行っています。今回はこちらに足を運びました。

千葉&美術&散歩

「近世から近代の日本絵画と版画」「1945年以降の現代美術」「千葉市を中心とした房総ゆかりの作品」という3つのテーマで作品を収集している千葉市美術館。

千葉市美術館

2025年11月からは、千葉地域や千葉市美術館の建物にスポットを当てた展覧会がスタートしました。「千葉=美術」というイメージが無いという方もいらっしゃるかもしれませんが、同時に千葉市美術館が素晴らしい美術展を多く企画していることも、愛好家の方々には広く知られていることと思います。千葉を舞台に作品を生み出した作家、そして千葉市美術館がもつ長いあゆみを振り返ります。

堀江正章、無縁寺心澄<千葉中時計台>

展覧会の解説にて紹介されている堀江正章<室内草花図>に惹かれました。撮影不可の作品ではありましたが、美術展のフライヤーにも大きく紹介されていたので、目玉作品の1つでしょうか。煌びやかに咲き誇る花々、実に爽やかです。清浄な空気感をも描いているかのようでした。彼は旧制千葉中学校で教員を務め、近代洋画の先駆けともいえる作品を生み出した方のようです。

千葉中時計台

千葉市内の風景を多数残した無縁寺心澄の<千葉中時計台>という作品です。彼は広く名が知れていた画家とは言い難い方ですが、堂々とした、空間を切り裂くようなタッチが印象的です。彼の情報をインターネットで探してみましたが、川の水をバケツで汲み出し、パレット一面に絵具を出し、激しく描いていたなど、力強いエピソードをいくつか発見しました。1900年代前半、戦前の千葉市の風景を描いたということで、歴史的観点からみても貴重な作品のようです。

奄美の風景画で有名な田中一村も…

存命の頃は名が知られていませんでしたが、人気画家として確固たる地位を築いている田中一村も千葉ゆかりの作家の1人。彼の作品は奄美大島のイメージが強いですが千葉滞在時にも多くの作品を残しているようです。今回は闘鶏の作品が多く出品されていましたが、生き生きと描かれた鶏の姿は、もはや具象表現であってそれだけではない、ある種の執念や品位が備わっているように感じました。

千葉市美術館といえば、素晴らしい建築もみどころ

最終章では、かつて千葉市美術館が川崎銀行千葉支店として使われていた歴史を伝えながら、精巧な模型も展示されていました。

模型

床には、昭和2年頃の千葉市街の様子を描いた地図が。空襲にも耐え、当時の流行を残すこの貴重な建築に足を踏み入れていることの重みを改めて感じます。

さや堂ホール

美術館の顔ともいえるスペース、さや堂ホールは厳かでモダンな空間です。何度でも立ち寄りたい場所ですね。

常設展示<企画展とコレクションの30年>八犬伝プロジェクト

5Fでは常設展示が行われています。この中の八犬伝プロジェクトでは、新しくコレクションされた石井林響<伏姫>とともに八犬伝の登場人物や見どころを描いた浮世絵が展示されていました。こちらは豊原国周の八犬士(南総里見八犬伝の主要人物8人のこと)シリーズです。

八犬士

力強く、見事な構成と誰がみても華やかな作品。

多色摺版画の疑似体験ができるスタンプ

展示に合わせて、多色摺版画が気軽に体験できるスタンプコーナーがありました。

スタンプ

版を1つ1つ重ねていくドキドキ感と興奮は、摺師の気分を少しだけ味わえたような気が致します。

現代アート部門のコレクション

千葉市美術館コレクション選として、木彫家・須田悦弘さんの作品が出品されていました。本物の草花と見間違えるような木彫作品はまさに驚きの一言。江戸時代の屏風の前に展示された<椿>は、いつか枯れる椿の花に永遠の命を吹き込んだような作品。諸行無常という美学に問いかけるかのようなアートです。

展示室奥にはもう一つの作品<芙蓉>。黒い小さな部屋が設置されています。

芙蓉外観

靴を脱いで、茶室の躙口のような狭く、そして暗い通路を進むと中には掛け軸のような白い画面が浮かび上がり、その前には精巧につくられた花が一輪。漆で塗られたという壁面はしっとりとした黒色です。当時制作された浮世絵で江戸時代の息づかいを感じ、須田悦弘による江戸の美に思いを馳せる。粋な展覧会でした。

芙蓉

つくりかけラボ19<へびと地層>

4Fの子どもアトリエでは、映像作家・小森はるかさんと画家・瀬尾夏美さんによるアートユニットの展示。東日本大震災をきっかけに始まった表現活動は全国各地に及び、地域や人々の記録をさまざまな手段で伝えています。かつてはお年寄りから若い世代に行われてきたこのプロセスを、アートというジャンルで提示する斬新で温かい取り組みのように感じました。

へびと地層

鑑賞者も参加できる作品

こちらでは訪れた人が誰でも参加できるワークショップが開催されていました。自分が思いついたへびを自由に描くというものや自分の大切な場所、気になる場所をエピソードとともにワークシートに記入するというもの。

ワークショップ

提出後に会場内に飾られることもあるそう。人々の記憶を伝えるというアートワークに鑑賞者も参加できる作品です。可愛らしい絵や個人的なエピソードによって、誰かの人生を共有する面白い試みですね。

 千葉の歴史、ゆかりのある作家にスポットを当てた今回の展覧会。開館30周年にふさわしいものであったと思います。千葉市のアートシーンを丁寧に追い、さらにつくりかけラボ19では“地域と人々の伝承”を見つめなおすプロジェクトを展示することによって、千葉という地域だけでなく、鑑賞者にとって「場所とは?歴史とは?」を考え直すきっかけとなるのではないでしょうか。

1年にわたり取り組んできた30周年記念展。ラストは1月から始まる「ロックフェラー・コレクション花鳥版画展」です。ぜひ、足を運んでみてくださいね。

 

<開館30周年・千葉開府900年記念 千葉美術散歩>
2025年11月1日㈯~2026年1月8日㈭
場所:千葉市美術館 7・8F企画展示室

<つくりかけラボ19 小森はるか+瀬尾夏美 へびと地層 風景から生まれる物語>
2025年10月11日㈯~2026年1月25日㈰
場所:千葉市美術館 4F 子どもアトリエ

<千葉市美術館コレクション選>
2025年11月5日㈬~11月30日㈰
場所:千葉市美術館5F 常設展示室

千葉市美術館 〒260-0013 千葉市中央区中央3-10-8
開館時間:10:00 – 18:00 (金・土曜日は、20:00まで)
※入場受付は閉館の30分前まで ※企画展休室中の土曜日は18:00まで

休館日:毎月第1・3月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)、メンテナンス日 ※企画展は月曜日休室(祝日の場合は翌平日)です。

※上記の休館日以外にも、展示替え等のため各展示室が閉室となる場合がございます。展覧会スケジュール等をご確認のうえご来場ください。

TEL:043-221-2311
公共交通機関アクセス:JR千葉駅東口より徒歩約15分
京成バス(バスのりば7)から大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」または「大和橋」下車徒歩約3分
千葉都市モノレール県庁前方面行「葭川(よしかわ)公園駅」下車徒歩5分
JR千葉駅へは東京駅地下ホームから総武線快速千葉方面行で約42分
京成千葉中央駅東口より徒歩約10分


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