具象彫刻の可能性「三沢厚彦ANIMALS/Multi -dimensions」千葉市美術館

 千葉市美術館は、以前から気になっていた美術館の1つだったのですが、自宅からのアクセスが少し不便であったため、これまで訪れたことがありませんでした。しかし「いつか作品をこの目で観てみたい!」と感じていた彫刻家・三沢厚彦さんの展覧会「三沢厚彦ANIMALS/Multi -dimensions」が開催されるということで、今回こちらに足を運びました。

美術館としては珍しいビル型の建築「千葉市美術館」

 千葉市中央区にある千葉市美術館は、区役所の複合施設として設計された建物で、地上12階、地下3階という美術館としては珍しいつくりの建築が特徴。デザインもレトロモダンというのでしょうか、とても雰囲気のある外観が素敵です。今回はフロアごとに展示作品の趣向が異なり、1人のアーティストから生まれた多種多様な世界観が楽しめそうです。

千葉市美術館入口画像

千葉市美術館外観

具象彫刻の新しい可能性を切り開く彫刻家・三沢厚彦さん 

 インターネットや書籍などで何度か作品を拝見したことのある三沢厚彦さんの作品。主に動物彫刻を手掛ける作家として知られています。現代美術の世界では、さまざまな素材を用いて、これまでになかった作品が次々と生まれていますが、三沢さんは「木彫」という伝統的な彫刻技法で作品制作を行っています。ただ、彼の作品は現実の生き物を写実的に写し取るというよりも、三沢さん独自の世界観を動物の姿を借りて表現しているように感じられます。実物の作品は、果たしてどのようなものなのでしょうか?

千葉市美術館屋外作品

自然光が美しいレトロ&モダンな空間 

 1Fにある高い天井が特徴的なスペースに三沢さんの作品が展示されていました。伝説上の生き物、ペガサスでしょうか。時が止まったようなレトロモダンな空間の中で、幻想的な風景に浸れます。幻想的といえども、確かな存在感を感じるのは彫刻という作品の魅力でしょう。1日を通して窓から差し込む光が変化すると、作品の雰囲気もがらりと変わりそうです。

三沢厚彦1F作品

同じ空間に画家・小林正人さんの作品が展示されていました。馬をモチーフとした絵画で三沢さんの作品との共通点を感じます。写真はありませんが、巨匠彫刻家・舟越桂さんの作品も展示されていました。今後の企画展を通して、こちらのスペースにどのような作品が展示されるのか、是非観てみたいものです。

小林正人1F作品

ロビーで出迎えてくれた作品たち                        

 展示会場入り口で出迎えてくれた白い熊の彫刻作品。静かな表情ですが、熊の手がこちらを招き入れてくれるような不思議な形に思えました。三沢さんの作品に出てくる動物は、決して表情豊かという訳では無いのですが、逆にそのことがこちらの想像力を刺激してくれるように思えます。

ロビー作品8F①

こちらも入口に展示されていたパンダの作品。彫刻の台座が先程の熊とは異なり、より素朴な印象です。台座にも作者の考えが反映されているのでしょう。三沢さんの動物彫刻は親しみやすい中にも、爪や指先まで魂が通っているかのような緊張感があります。

ロビー作品8F➁

熊づくしのスペース!                           

 絵画や彫刻で頻繁に熊をモデルにした作品をつくられている三沢さん。熊の作品のみを集めた空間がありました。どこかエジプト彫刻のような堅牢さも伺わせる熊たちです。遠くを見据え、力強くも思えますが、逆に力が抜けているような、絶妙な空気感。本物は私の背をはるかに超える大きさで、その重量感に圧倒されます。

熊スペース①

熊のスペースでは巨大な絵画も展示されていました。先程紹介した3体の彫刻と向かい合うように設置されていますが、どのような意味が込められているのでしょうか。ずんぐりとした手足や確かな存在感を放つ毛並みは、作家がもつ「熊」さらには「動物」への興味・眼差しが写し出されているようです。

熊スペース➁

木彫以外にも…  

 三沢さんといえば、楠という木で木彫作品を制作しているイメージがありましたが、今回の展示では陶器でつくられた作品も出品されていました。熊や虎など三沢さんが頻繁に手掛けている動物たちがモデルに。

陶器作品

陶器は木と違って細い形状を維持して立たせることが難しい素材。自然と動物たちの足が逞しく、そしてどことなくゴロっとした塊のイメージが強い作品になるのだと思います。アート作品は使用される素材に助けられることもありますが、同時に制約も受けて成り立っているものなのだと改めて感じます。

木彫以外作品全体像

参加型展示スペース には遊び心満載のANIMALS

 4Fにあるワークスペース“子どもアトリエ”では「三沢厚彦 コネクションズ 空洞をうめる」というワークショップが開催されていました。参加者が小さな木片を組み合わせてオリジナルの作品をつくり、展示会場に飾る。という内容の取り組みでした。

ワークスペース

長い台座に数えきれないほどのたくさんの作品!小さなお子様も参加OKとのことで、大変可愛らしい作品も…。

図書館作品

同じフロアにある“びじゅつライブラリー”にも作品が展示されているとのこと。さりげなく日常に溶け込むように設置された作品たちは、展示会場とはまた違った親しみやすい雰囲気を感じます。

コレクション展 に隠された秘密 

 企画展のチケットを購入すると、千葉市美術館のコレクション展も鑑賞することができました。今回は三沢さんとコレクション展のコラボで、会場内には目を疑うようなユニークな仕掛けが…。コレクションの1つ、名牛の肖像画と思われる屏風の下方に三沢さんの彫刻作品が展示されていました。画中の牛をみつめるようなその佇まいに思わずほっこり。

隠れ作品

展覧会をみて  

 三沢厚彦さんの作品をいつか鑑賞したいと思っていたので、このような機会に恵まれて本当に幸運でした。やはり彫刻作品は本物を観た時の存在感・重量感に圧倒されますね。鑑賞スペースがいくつかのフロアに分かれており、夏休みシーズン中でワークショップも開催されていたこともあって、エレベーターの待ち時間に少々もどかしい思いもしましたが、充実したひとときを過ごせました。7Fには彼の代表作ANIMALSシリーズを手掛ける前の貴重な作品たちや、映像作品などが展示されていたことにも深く感動!ご紹介した写真の中にはありませんが新作「キメラ」(※キメラとは、同一個体内に異なる遺伝情報をもつ個体のこと)も圧倒的な力強さを感じる作品で、いつかもう一度見る機会があれば…と思います。人間がもつ動物へのイメージは、恐怖・慈愛・神秘などさまざまありますが、それを彫刻という媒体を用いて現実に提示してくれる、三沢さんの作品を鑑賞してそのような印象を持ちました。

 訪れたことのなかった今回の千葉市美術館。レトロモダンな1Fのスペースが印象的でした。これまでにない、新しい取り組みも多く企画している美術館ですので、是非足を運んでみてくださいね。

<三沢厚彦ANIMALS/Multi –dimensions>
千葉市美術館
会期:2023年6月10日[土] – 9月10日[日]
休館日/休室日:休室日:6月12日[月]、19日[月]、26日[月]、7月3日[月]、10
[月]、18日[火]、8月7日[月]、21日[月]、9月4日[月]※第1月曜日は全館休館
開館時間:10:00 – 18:00 (金・土曜日は、20:00まで)※入場受付は閉館の30分前まで
住所:〒260-0013 千葉市中央区中央3-10-8
TEL:043-221-2311
アクセス:JR千葉駅東口から
徒歩約15分
京成バス(バスのりば7)から大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」または「大和橋」下車徒歩約3分
千葉都市モノレール県庁前方面行「葭川(よしかわ)公園駅」下車徒歩5分
JR千葉駅へは東京駅地下ホームから総武線快速千葉方面行で約42分

京成千葉中央駅東口から
徒歩約10分
※会期は既に終了しています。


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