国立新美術館「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」

 今回は東京都港区にある国立新美術館で開催中の「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」に足を運びました。この展覧会では、世界でも指折りの美術館であるニューヨークのメトロポリタン美術館のコレクションを紹介しており、驚くべきことに出展作品の半分以上が日本初公開の歴史的名品!どの作品も展覧会の主役となるような優品ばかりなのです。

数十年に一度のチャンス。メトロポリタン美術館展とは?

メトロポリタン美術館展 会場「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」は開催前からその豪華な出展作品が話題となっていました。西洋絵画に詳しい方でしたら、本当に驚きの展示内容だと思います。今回のようにラファエロ、マネ、モネ、ルノワール、ゴッホ、フェルメールなど美術の教科書に名を残す画家の作品を一様に鑑賞できるとなれば足を運びたい方はきっと多いはず。そのうえ、出品される作品65点のうち46点は日本初公開。このような美術展は滅多に催されるものではありません。私は、なるべく人混みを避けて鑑賞したかったので、比較的空いている平日の朝1番の時間帯でチケットを予約しましたが、会場に着くと既に長蛇の列が出来上がっていました。十代から高齢の方まで様々な年齢層の方が訪れており、その人気ぶりを実感!人が押し寄せる中、すべての作品をじっくり鑑賞する時間や体力は無いけれど、自分の気になった作品だけは存分に味わうことにしました。

「メトロポリタン美術館」注目ポイント

1.国内では貴重な「板絵」を鑑賞!

カルロ・クリヴェッリ <聖母子> テンペラ、金/板 メトロポリタン美術館

出典:メトロポリタン美術館 カルロ・クリヴェッリ<聖母子>テンペラ、金/板

今回期待していたのは「板絵」が展示されること。「板絵」は、その名の通り板に描かれた絵のことで、現存する作品はとても貴重とされています。その昔、キャンパス(帆布)が普及する前に、絵画制作に頻繁に使われていた支持体でした。特に初期ルネサンスのものは国内で観ることは難しいとされており、とても楽しみにしていましたが、決して大きいサイズといえない「板絵」を人混みの中で見なければならないことに苦心しました。油彩とは異なり、静かですっきりとすがすがしい雰囲気の板絵は、宗教画というテーマに合っているような気がします。絵画の技法に詳しい方ならもっと感動が生まれたのかも、と感じました。

2.作品にも負けない展覧会プロデュース

次に期待していたのは、展示構成。遥か昔、宗教信仰のために描かれていた絵画が、人々の存在や風景を表現するものへと変化していく様子を3部構成で辿れる構成が素晴らしいと感じました。初期ルネサンス~印象派まで激動の500年間を歴史的名品で追体験できる機会はなかなかありません。個人的には時代背景を想像しながら、同じ人間として画家が何を考えていたか?感じていたのか?に思いを巡らすことも歴史的な名品を楽しむ醍醐味。歴史と絵画の関係を知ると、より面白さが増す気がします。さらに、展示空間の壁面は真っ赤であったり目の覚めるような深い青であったり、企画者の思い切りの良さも感じました。強烈なそれらの色に負けないほどの作品たちの存在感はさすがでした。

やはり、本物には良い意味で裏切られる !

マロード・ウィリアム・ターナー

出典: メトロポリタン美術館 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー <ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む> 油彩/カンヴァス

1.名画こそ本物を

日本初出品のダヴィデ・ギルランダイオの「セルヴァッジャ・サッセッティ」という作品は、女性の肖像画。鑑賞前は特に意識していなかった名画ですが、金色の髪の瑞々しさや艶が美しく、思わず見入ってしまいました。さらに、巨匠ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む」も今回の出品作の1つ。ターナーは大気をも描くといわれ、鑑賞前は霧が立ち込めるような湿気をまとう雰囲気の作品を想像していましたが、実際に絵の前に立つと不思議と爽やかな風と清々しさを感じました。このように鑑賞前とは違った印象を抱いたり、ノーマークだった作品の中でお気に入りの作品を見つけるのは実際に足を運ばないと経験できないことですよね。

(2)気になっていたマリー・ドニーズ・ヴィレールの「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)」

マリー・ドニーズ・ヴィレール

出典: メトロポリタン美術館 マリー・ドニーズ・ヴィレール <マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)> 油彩/カンヴァス

初めて見たときから、何となく惹かれていたこちらの作品。本物は、やはり吸い寄せられるような不思議な印象を持ちました。逆光の中、こちらをみつめる女性の悲しいのか怒っているのか、なんとも言えない表情が心に迫ってくるような魅力を感じます。殺風景ともいえる部屋の様子や割れた窓も不穏な空気を醸し出しているし、描かれている女性は絵を描いているみたいだけれど、画家なのだろうか?などなど次々と想像が膨らみます。実はこの絵は、長い間巨匠ダヴィッドが描いた作品とされていたそうですが、1996年に女性の画家マリー・ドニーズ・ヴィレール作のものであると判明したそう。芸術の世界にもあった女性への偏見や女性芸術家の研究にもキーポイントとなりそうな作品ですね。

 

最後の展示室では、名品を映像で辿る 

メトロポリタン美術館展 映像

国立新美術館 メトロポリタン美術館展 映像ブース

最後の展示室では、メトロポリタン美術館ヨーロッパ絵画部門の所蔵作品が美しい作品画像と共に次々と映し出されるスペースでした。同時に、それぞれの作品が生まれた年代や地域も紹介され、人間が長い時間芸術活動を営んできたことを改めて感じさせるもので思わず見入ってしまいました。ミュージアムショップはユニークなグッズがありそうだったものの、人で溢れており見る気が削がれてしまいました…。

今回の展覧会を観て           

メトロポリタン美術館展 ショップ

国立新美術館 メトロポリタン美術館展 ショップ

まず感じたことは、遠い昔に人の手でつくられたもの(ルネサンス期のものだと600年前!)が目の前にあるという圧倒的な感動です。過去に生きていた人々が、私たちと同じように時代と向き合い、そしてひたむきに絵を描いていたという事実に心打たれます。それぞれの絵の前に立つと、巨匠たちが絵筆を持ち制作する姿やどんな場所に飾られていたのか?など想像せずにはいられません。絵に添えられた作品解説も分かりやすく、あまり絵画の歴史に詳しくない方でも楽しめると思います。

最後に              

歴史的名品たちに会える機会は決して多くありません。今回の展覧会は、人混みが苦手な方は二の足を踏んでしまうかもしれませんが、訪れる価値は十分過ぎる程あります。気になる方はぜひ足を運んでみてください!

(展覧会情報)
国立新美術館
住所:106-8558 東京都港区六本木7-22-2
https://www.nact.jp
アクセス:
<電車>
東京メトロ千代田線乃木坂駅
青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
<バス>
都営バス
六本木駅前下車徒歩約7分
青山斎場下車徒歩約5分
港区コミュニティバス「ちぃばす」赤坂
循環ルート六本木七丁目下車徒歩約4分
※運行系統、バス乗場については各事業者にお問い合わせください。

「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」展
展覧会HP:https://met.exhn.jp/
会期:2022年2月9日(水)~ 2022年5月30日(月)
毎週火曜日休館 ※ただし5月3日(火・祝)は開館
開館時間:10:00~18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
・変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。


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