特別展以外にも見どころ満載!根津美術館で「遊びの美」

 かなり前に足を運び、思いがけず広い庭園に目を奪われた根津美術館。当時は閉館間際に訪れたため、庭園をじっくり堪能できなかったことを悔やみました。先日、美術館のHPをのぞくと庭園内で梅がほころびはじめているとの情報が。今回はゆっくり、展覧会と共に美術館の庭園を楽しむことにしました。

根津美術館看板

東洋の美、日本の美 根津美術館

 根津美術館は日本・東洋の古美術品を中心とした貴重な作品を保存、公開しています。この7,000件を超えるコレクションの中には、国宝7件も含まれているそう。館内には茶室も複数あり、見応えのある美しい庭園もあります。海外からの来館者も多く、まさに日本・東洋美術に関しては随一の美術館といえるでしょう。美術館入口から気分を盛り上げてくれます。

根津美術館入口1根津美術館入口2

生きる術でもあった“遊び”の美

 今回は日本古来の“遊び”をテーマとした特別展<遊びの美>に訪れました。かつて、遊びは単なる娯楽ではなく、楽しみながらも社会の中で生きる術を身に着ける手段だったのだとか。まず、気になったのは展示室1にあった「桜下蹴鞠図屏風」。桜の木と蹴鞠をする様子が描かれているのですが、画面が前後に配置されている屏風独特の形が、空間の奥行きを感じさせ、蹴鞠の臨場感を出しているようでとても興味深かったです。当時、蹴鞠は専門とする家ができる程重視されており、いくつかの流派まで出来ていたという解説には驚きました。もう1つ、同じく展示室1にあった「貝合わせ」という遊びの道具。長らく存在は知っていたのですが本物をみたのは今回が初めてでした。「貝合わせ」とは、一対になるハマグリの貝殻を引き当てる遊びです。左右の貝の内側には花・鳥・人物など、全く同じ図柄が描かれており、それをヒントに片方を探し出します。

こちらの写真の作品は、今回展示されているものでは無いのですが参考までに。

松竹蒔絵貝桶(colbase)

<松竹蒔絵貝桶>江戸時代 出典 国立文化財機構所蔵品統合検索システムhttps://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/H-1555?locale=ja

 

今回展示されていたものは、小さな鳥が貝それぞれに描かれているものだったのですが、異なる貝同士でありながら絵が似ているものもあり、実際はかなり難しそうだなと感じました。

山水画の魅力

 建物2階にある展示室5では<山水>というテーマ展示が行われていました。山水は読んで字の如く、山や河川などの自然の景観が描かれた絵のこと。山水画というと、美しい山々や滝が繊細に、時に豪快に描かれたものというイメージを持っていました。しかし、展示された作品たちを眺めていると作者の考え方・ものの見方が反映されるとても面白いジャンルの絵だと感じました。人生の愁いを感じさせるようなもの、瞑想しているような心持ちになるようなもの、または圧倒的なパワーを感じさせるもの…。並べて鑑賞すると、これほど個性が出るテーマなのだと気づきました。

除夜釜という美しい文化 

 展示室6では<除夜釜>をテーマとして、主に茶道具の展示が行われていました。除夜釜とは、大晦日に年末の挨拶を兼ね、気軽に亭主とひとときを過ごす茶事のこと。会場には除夜釜に関連させた茶道具が鑑賞者を迎えてくれました。干支にちなんだ茶道具など、1年を振り返り感謝するような工夫がみえる作品たち。残念ながら写真はありませんが「志野暦茶碗 銘 年男」や「茶杓 銘 大晦日 共筒」などを鑑賞していくうちに、年越しの茶事を想像してしまいます。忙しい年の瀬に短い時間でさらりと、でも心を込めて客人をもてなすひとときは素敵ですね。人のあたたかさを感じる伝統文化です。

庭園は見逃せません! 

 根津美術館の魅力の1つといえば庭園です。1月に訪れた際には、冬ならではの静謐な雰囲気が心を落ち着かせてくれました。

根津美術館庭園1根津美術館庭園2

うっかりしていると、迷ってしまうほどの広さ。MAPを片手に庭を楽しむのも良いですが、案内に沿って、気ままに歩くのも良さそうです。

根津美術館庭園案内

根津美術館にある茶室の1つ、弘仁亭・無事庵。

根津美術館庭園茶室

庭園には全部で4つの茶室があります。機会があれば、ぜひ建物の中もみてみたいものです。

ところどころに、石造が。

どれもよくみると、平安時代や室町時代などにつくられた貴重なもの。このようなところにさりげなく置いてあると「雨風にさらされるところに置いておいて大丈夫?」と心配になりますが、石造とは本来そうあるべきものなのかもしれません。

根津美術館庭園石造1根津美術館庭園石造2

展覧会を観て 

 <遊びの美>では屏風が多く展示されていました。中でも「洛中洛外図屏風」、「伊勢参宮図屏風」、「邸内遊楽図屏風」などは、大勢の観衆や市民の人々が描かれていました。描かれている1人1人に注目してみると、何とも言えない表情をしていたり、不思議な動きをしていたりと思わず観ていてクスッと笑ってしまいました。生きている犬を的に見立てて矢を放つ(矢の先は丸くするなど配慮されていたようです)犬追物という競技が描かれた「犬追物図屏風」は私の場合、観ていて心休まるものとは言い難く、どのような人のどのような部屋に使われていたのか気になりました。屏風を観るときに、当時どのような場所にあったのか知るのも鑑賞の楽しさの1つになりそうです。今回の展示を観て、かつて“遊び”は五感や体を使って人間本来の生きる力を養えるものが多かったのだな、現代の遊びはどうなのだろう?とつい考えてしまいました。でも、“遊び”に意味や目的を求め過ぎること自体、現代の感覚では少しナンセンスなのかもしませんね。

複数あるテーマ展示も見応えのあるものばかりで、休憩を挟みながらゆっくり鑑賞するのがおすすめです。入口からほど近いホールにも、テーマ展示である素晴らしい石の仏像たちがお目見え。

根津美術館庭園ホール

 特別展の他にも見どころがたくさんある根津美術館。春の足音も聞こえてくるこれからの季節は、のんびり庭園散策も良いですね。

根津美術館<遊びの美>
住所:107-0062東京都港区南青山6丁目5-1
会期:2022年12月17日(土)~2023年2月5日(日)
休館日:毎週月曜日 ただし1月9日(月・祝)は開館、翌10日(火)休館
※年末年始12月26日(月)から1月4日(水)まで休館
開館時間:午前10時~午後5時。(入館はいずれも閉館30分前まで)
アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線
〈表参道〉駅下車
A5出口(階段)より徒歩8分
B4出口(階段とエレベータ)より徒歩10分
B3出口(エレベータまたはエスカレータ)より徒歩10分
※上記は変更の可能性があります。足をお運びの際には事前にご確認ください。


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